樹脂・プラスチック加工会社の売却準備では、決算書と現場資料をつなぎ、確認した人が同じ結論にたどり着ける状態を目指します。金型や成形条件を一覧にするだけでなく、数字の対象期間、根拠資料、説明できる担当者をそろえることが出発点です。
1.資料を開示する段階から逆算する
最初から顧客名や図面をすべて渡す必要はありません。まず社内用の資料一覧を作り、誰に何を見せられるかを確認します。候補先への実名開示では、売り手の同意と候補先との秘密保持契約を確認することが、中小企業庁の中小M&Aガイドラインに示されています。
| 段階 | 資料と開示前の確認 |
|---|---|
| 社名を伏せた初期検討 | 主な加工方法、用途、規模、希望条件。製品写真や所在地の組合せから会社が特定されないかも確認します。 |
| 候補先と具体的に検討 | 財務推移、設備・金型一覧、顧客構成。開示先への同意とNDA(秘密保持契約)に加え、資料ごとの開示条件を確認します。 |
| 買収前の詳細調査 | 契約書、原価明細、品質記録など。質問に必要な範囲を整理し、閲覧した人と提示した版を記録します。 |
顧客から預かった図面、独自の配合や成形条件は分けて管理します。NDAの締結だけで他社情報を自由に渡せるとは判断せず、元の契約と照合します。情報の分類と開示範囲は、共同公表された知財取引指針も参考になります。
2.売上から請求まで、数字を突き合わせる
顧客別売上の合計を試算表と照合し、対象月や計上基準をそろえます。差があれば、納品済みで未請求の分、返品・値引き、締め日の違いなどを確認し、差額の理由をメモします。修正前の数字を消さず、修正日と根拠を残すと追加質問に対応しやすくなります。
次に主要製品を選び、受注数量、材料使用、製造実績、検査、出荷、請求を追います。材料価格が上がった時期と販売単価を改定した時期を並べ、粗利の変化を数量・単価・原価に分けて説明します。仕掛品(製造途中の品)や滞留在庫は、帳簿と現物を照合し、評価方法も確認しましょう。
3.現場資料には担当者と更新日を付ける
設備・金型・材料・品質資料には共通の製品番号や金型番号を使います。担当者だけが分かる呼び名は正式名称と対応させ、古い図面や条件表を現行版と混在させないようにします。資料一覧には、次の四つの欄を設けると確認状況を追えます。
- 資料名・対象期間・保存場所
- 作成者と内容を説明できる人
- 確認済みの日付と未確認の項目
- 次の確認先・担当者・回答予定
たとえば品質クレームは件数だけでなく、対象ロット、原因、対策、顧客への回答状況までつなげます。設備更新についても、故障履歴、見積書、予定時期を結び付け、確定した計画と検討中の案を区別します。
4.不足資料より、説明が途切れる箇所を優先する
優先順位は「重要な売上に関わる」「担当者が一人しかいない」「契約との食い違いがある」の順に見直します。全資料を完成させようとして準備を止めず、代表的な製品から突合を試し、同じ方法を広げると整理を進めやすくなります。
不明点は推測で埋めず、分かっている事実と確認中の事項を分けます。資料の出来栄えだけで譲渡条件が決まるわけではありませんが、未解決事項を具体的に説明できれば、調査や引継ぎで何を確認するかを話し合えます。
資料が揃っていない段階でも、社名を伏せた初回相談が可能です。手元にある決算書や設備一覧から、譲渡準備について相談する。全体の順序はM&A・事業承継の流れをご確認ください。
